私には、聞き取り困難症・聴覚情報処理障害(LiD/APD)と自閉スペクトラム症(ASD)を併せ持つ、来月22歳になる娘がいます。
LiD/APDの娘の日常生活と工夫
聞き取り困難症、聴力情報処理障害に治療法はあるのか?
まず、前提として、聞き取り困難症、聴覚情報処理障害(LiD/APD)は現在のところ、確立された治療法というものはありません。
その理由は、LiD/APDが脳の気質的な偏りから起こる症状だからと考えられています。
そして、その偏りは娘のように自閉スペクトラム症などの発達障害につながるのですが、重要な脳の仕組みのひとつにたとえば、作業記憶(ワーキングメモリ)があります。
聞き取った情報を一時的にとどめ、次に来る情報やほかの情報、過去の記憶などと結び付けて考える。そして、同時に不要な情報は削除しつつ、必要な情報を残すという作業を同時に行う処理するしくみです。
発達検査において判定の5項目の中で、ワーキングメモリの値が低かった娘は
・長文などで始めの内容が覚えていられない
・同時進行で作業をすることが苦手
・忘れ物が多い などの様子があります。
また、脳の聴覚野という部分で行われる耳から聞こえた情報(聴覚情報)の処理のひとつにカクテルパーティー効果というものがあります。
たとえば、パーティー会場など騒がしい場所あっても、自分の名前を呼ばれたら気づく、関心のある話題は耳に入るという作用です。
「選択的注意」と呼ばれたりもします。
しかし、娘は、この点においても
・ざわざわした場所で呼びかけられても気づきにくい
・バイト先のケーキ屋さんで、カウンター越しのお客さんの声が聞き取れない
などの症状があるそうです。
こういった症状が、聞こえが成立するための複雑な脳の仕組みが、何らかの影響で上手く作用しなかったり、偏りにより起こるため、LiD/APDの人に起こる症状は「聴こえの特性」と言った方が解釈しやすいのかな?と私は思っています。
そして、治療法はなくとも、学校生活、社会生活、仕事はしていかなければならないため、それに対する工夫が必要になります。
こういった、娘の聴こえの特性を踏まえた上で、娘なりの工夫を聞いてみました。
参考にしてみてください。
メモ
「なんだ、メモか」と思いますが、娘には必須事項、アイテム。
ワーキングメモリの数値が低い娘は、
☆同時進行の作業
☆素早く情報を整理する
☆瞬時に優先順位をつける
ということが苦手ですが、聞き取り困難症・聴覚情報処理障害(LiD/APD)と診断される以前から無意識に、生活の中の対策で取ってきた方法が「とりあえず、メモをとる」ということでした。
そして、落ち着いたら、そのメモを整理し、頭の中も整理する。
この作業を、思い返すと中学2~3年のころからしていた、と言っています。
そして、ASDとLiD/APDがわかった現在、用途に応じてメモを区別したり、常にメモを携帯し残すようにし、残した内容のまとめ方もマイルールを作って整理しているそうです。
どんどん流れてくる情報や会話をメモに残すことで、忘れることを予防しています。
スマホの便利機能
メモ、リマインダー、TODOリスト、アラームは常に働かせています。
買い物や授業の課題、待ち合わせ場所への乗る電車など「忘れてはいけない」ことに関して、こまめに記録して、終わったら消す、という作業をしているようです。
Todoリストに関しては、ひとつづつ消えていくのが達成感が得られるようで、楽しんで使っています。
ICレコーダー
大学の講義で、大学2年の後期が始まるころに使い始めました。
例えば、大講堂などで音が広がりやすいときは聞き取りにくいし、ぼそぼそと話す教授の場合は、教室などの環境の問題ではなく聞こえません。
講義内容を必死でメモを取ろうとしても、聞き取る方にさらに労力が必要になり、いらいら&へとへとになっている時期がありました。
そして、また、聞き取りやすい環境であっても、同時進行の作業が上手くいかず、聞き漏らしがあるそうなので、大事な講義の場合などは、メモとレコーダーを照らし合わせたりもしているそうです。
聞き漏らしても、録音している安心感があるので、ストレスはずいぶん軽減できるそうです。
※授業での使用は大学に申請しています。
使用する場面により、必要な手続きなどがあると思いますので、確認と自己責任の上の使用が必要です
耳栓
聞き取り困難症・聴覚情報処理障害(LiD/APD)の診断を受けた当初、ネットで調べたこちらを使用していました。
購入してすぐは、娘は家族との会話やリビングでテレビを観るときなどに使用していましたが、これはさすが「耳栓」として販売されているだけあって、全体の音も小さくなる。
私も試してみましたが、会話で使用すると、周囲の音と同様に聞き取りたいはずの相手の声も小さくなる。それを聞き取るためにパワーが必要になるので、現在は人との会話には使っていません。
最近は、例えば電車の中などで使っています。
車両が走るガタンゴトンという音、人の話し声、物音、アナウンスなどが娘には同じボリュームレベルで聞こえ、日によればとても疲れてしまうそう。
そんなときに、この耳栓を使用して電車に乗ると、全体の音が抑えられ、でもアナウンスは聞こえるという状態になり、落ち着くそうです。
YouTubeなどでは、同じLiD/APDでこの耳栓と相性が言い方もいて、使用感は人によるようです。
一度試してみるのもいいかもしれませんね。
現在は、補聴器(補聴援助システム・ロジャーフォーカスⅡ)を購入予定です。
字幕
娘は、いつごろからだったか、自宅のテレビを字幕表示してみています。
普段のニュースやバラエティー、どんな番組も。
初めは、私たち家族も気になっていましたが、慣れました。
ずっと字幕を追って見ているわけではないそうですが、早口でまくし立てるタレントや、効果音が大きな映画、アニメなどは聞き取りが悪くなるので頼りがちになるそうです。
まとめ
始めに「治療法はない」と書いたように、結局工夫と、ストレスの軽減を図ることが重要事項。
同じ聞き取り困難症・聴覚情報処理障害(LiD/APD)でも、聞こえにくさ、聞こえにくい環境、改善できるグッズは人それぞれのようです。
だから、便利なグッズや機能をどんどん使って、自分に合うものを探すことが必要だし、また自分の聴こえの状況を相手や周囲に理解してもらうことも大切ですね。
娘は、診断から1年経ちやっと、親しい相手にはLiD/APDのことを打ち明け、こちらを向いて話してほしいことや、聞き取りが上手くいかない時はメモをお願いできるように、少しずつなり始めたようです。
もしかしたら、ここが一番大切なのかもしれませんね。
ここまでお読みいただき、ありがとうざいました。
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